私のちオレときどき僕

年収400万の家づくりノート、子育て、想うことなど。日々を綴ります。

言いたいことも言えないこんな世の中で中間管理職な僕だけど「会社なんかより一人の人間の人生のほうが大事」と思った話

「中途半端に辞めたら次の会社に行っても通用しないぞ」
「xxx、お前もお前だ。辞めたいやつは辞めれば良いと思ってるのか?」
「こんなことを許していたらいつまで経っても会社として成長出来ん」

こう言われた瞬間、おそらく僕は初めて上司に向かって感情をあらわにして反論した。

「成長って売り上げの話ですか?」
「それが今の争点ですか?」
「だったら新しい人間を入れれば解決する話じゃないですか?」

普段もの静かな僕に急にまくし立てられて泡を食った上司は何を思ったか

「そうやって、自分の思い通りにならないと、すぐに感情的になるよな、お前は!」
「オレにたてついても何の意味もないぞ!」

と意味不明な捨て台詞を吐いてきた。
(アホか。大体すぐキレるのはお前だろうが)と喉元まで出てきたがグッと飲み込んだ。上司を言い負かすことが今回の目的ではない。


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数年前のこと。
ある日、若手社員のUが会社を辞めたいと言ってきた。それを聞いた時、僕は残念であると同時にあぁやはりな、とも思った。

入社から4年。
Uはいつも答えを探していた。
自分は何を頑張れば良いのか?
どうすれば評価されて給料があがるのか?
会社はこれからどこへ向かおうとしているのか?
数年の間、悩み探し続けた結果、この会社には自分の求める答えは無いと気づいたのだ。

Uから辞意を聞いた日の夜。
僕はUの新人時代の報告書を読み返していた。そこにはこう書いてあった。

「自分の無責任な提案によりプロジェクト全体の計画に支障をきたしてしまった。今後はしっかりと調査をした上で提案するようにしたい」

僕は、泣きそうになった。
彼はいつも真摯だった。
頑固で融通の利かないところもあったけれど、いつもいかに効率的に仕事をこなせるか最適な方法を模索するよう心がけて実践していた。

そんな彼だから、顧客都合で業績が不安定になる自転車操業的な中小企業では、さぞ仕事がやりにくかったのだろう。何を頑張れば良いのかその時々でコロコロ変わってしまって、自分の力を集中して発揮出来る場がどこにあるのか分からないのだ。


✳︎


U本人と上司が直接話をしてもラチがあかない感じだったので、僕からも話をしたのだが、上司は最初から最後まで冒頭のような調子だった。

「オレは認めない。立場上認められない」

と意味不明な供述を続けていた。

何の権利があってそんなことが言えるのか疑問だし、仮にあったとしても、一人の大人が模索し、悩み、考え抜いた末に出した結論なのだから、その意見を尊重するべきだと思う。Uに関して言えば数年に渡って会社に利益をもたらした功労者でもある。

とはいえ、何故Uが辞めたいと思っているのか、僕がどれだけ説明しても根本的な部分は全く理解出来てない上司だったから、一連の言動も無理もないのかもしれないが。


✳︎


色々あったものの最終的にUの辞表は受理されて無事に退職することになった。

送別会の帰り道で、僕はUに声をかけられた。

「僕の退職の件でxxxさんからも上司さんにかけあってもらって…迷惑をかけてしまってすみませんでした…」

バカ野郎。お前はそんなこと気にしなくて良いんだよ。と思いながら

「いや、オレは特に何もしてないよ。それより次はどんな仕事?」

と適当にお茶を濁しておいた。
彼ならばどんな職場でもしっかりとやっていけるだろう。
願わくば彼にとってこれまでよりも挑戦しがいのある仕事が待っていますように。

当たり前だけど、会社なんかより一人の人間の人生のほうが大事、と思った中間管理職の話。


(終)