本当にあったやるせない話「BUMP OF CHICKENって知ってる?」
とある男の話。
男は音楽が好きだった。
日々アンテナをはって、素敵な音楽を探していた。
ある日、ラジオから流れてくる音に感銘を受けた。
これは素敵なバンドを見つけた、と思った。
BUMP OF CHICKEN?
インディーか?
聞いたことの無いバンドだ。
でもこのバンドはいつかメジャーになるだろう、と確信めいた感覚があった。
それからと言うもの、男は会う人会う人にBUMPを勧めた。
「最近良いバンド見つけたんだよ!」
「ふーん。インディーズなの」
「この曲とかさぁ、最高なんだよ!」
「へー、今度聴いてみるわ」
誰も相手にしてくれなかった。
しかし男はめげずに布教活動を続けた。
こんなにも良い音楽が売れないなんて絶対間違ってる!
使命感にもかられた衝動。
ある時。
転機は急に訪れた。
「見えないものを見ようとして」
キャッチーなメロディ。
過去に想いをはせるセンチメンタルな歌詞。
天体観測。
さながら超新星のように。
爆発的なヒットでバンドの知名度を押し上げた。
男は喜んだ。
これでやっとみんなとBUMPの話が出来る。
この前までBUMPのことを完全スルーしてた友人にも自分の先見の明を自慢してやろう。
ちょっとくらいは許されるよね?とほくそ笑んだ。
ほどなくしてその友人に会う機会があった。
その日は珍しく友人のほうからこう切り出してきた。
「最近良いバンド見つけたんだよ」
「おっ、そうなん?」
「BUMP OF CHICKENって知ってる?」
(終)